高齢者にも使いやすい住宅を考えることは今現在、高齢者と
同居している方だけに限ったお話しではありません。
自分が歳をとった時に備えて20年、30年といった長い目で
住宅を計画しておくことはとても大事なことです。
また、高齢者向け住宅というと手すりや昇降機などの設備で
対処する方法がすぐに思い浮かびますが、それだけではなく
プランニングそのものを工夫することで、高齢者にとって
「やさしい」住宅を計画することも可能です。
◆基本的な留意点
1)日常的な動作の妨げとなるものを排除する。
開けにくい「重い扉」、部屋間のスムーズな移動を妨げる
「段差」や「狭い廊下」が生じないように計画することが
重要です。
また、日常生活の移動が楽に行えるように、高齢者の寝室、
トイレ、浴室等はできるだけ近くにすることがポイントです。
2)事故を引き起こす可能性のあるものを排除する。
転倒の可能性がある「床の段差」や「滑りやすい床材」、
ヒートショックを招く恐れがある「部屋間の温度差」、
また誤操作の危険性がある「複雑な設備機器」などは極力
使用しないようにしましょう。
3)補助設備を設置するか、将来設置できるように備える。
階段、トイレ、浴室などの「手すり」、「エレベーター」
などの移動を助ける設備を設置しておくか、将来設置できる
ように想定しておくことが重要です。
将来設置できるようにしておくには、当初からスペースを
確保し、下地を補強しておくことが必要です。
◆部屋別のポイント
・洗面所
洗面台は椅子に座っても使用できる高さにしておきましょう。
収納スペースは、常に手の届く範囲で計画をしておくことが
大事です。
・浴室
浴室の扉は、アクリルガラスなどの割れにくい素材を選びま
しょう。跨ぎやすい高さの浴槽を選んだり、腰掛を設置する
など、洗い場と浴槽との移動に配慮が必要です。
・台所
特に安全面への配慮が重要です。
電磁調理器具は、火を使わないので比較的安全と言われて
いますが、使い慣れていない方にとってはかえって不便な
部分もあるようです。
部屋の用途に関らず、
1)介護を想定した広めのスペースを確保しておく。
2)引戸等は開閉が楽な建具を選ぶ。
3)水に濡れても滑りにくい床材を選ぶ。
4)水栓金具やドアハンドルは、レバー式等の操作性が
高いもの選ぶ。
5)照明や設備機器のスイッチは、大型のものを選ぶ。
6)緊急時に備えてブザーを設置する。
などは、最低限考慮しておきましょう。
これらを充実するには、コストの問題を避けて通ることが
できません。設備の貸与や高齢者対応の住宅改造に助成金
制度を設けている行政もありますので、積極的に利用しま
しょう。さらに機能面だけでなくプライバシー、家族間の
コミュニケーションなど高齢者の心理面にも十分考慮して
計画を立てることが重要です。